日本人トレーナーとしては初となる フットサル セリエAの舞台で Ecocity Futsal Genzanoメディカルチームの一員として2024-2025シーズンも戦い抜いた中谷駿佑さん。日本から遠く離れたイタリアで 戦い続ける彼の挑戦にNineTimesNine が迫っていく
- セリエAというイタリアのトップカテゴリーでメディカルトレーナーとして活躍している中谷さんですがなぜイタリアへ挑戦しようと決めたのでしょうか?
元々自分にしか歩めない道を切り開いていきたいという思いが強かったこともありますが、それに加え 大学在学中に周りの学生や卒業生の活動を見ていく中で当初思い描いていたような魅力を感じなかったことから、自分の将来を考え環境を変えるべきだと思い海外を視野に入れ始めました。そこで 鍼灸の専門学校を卒業後ヨーロッパでの研修を行えるチャンスを探し、イタリアへの6ヶ月研修の話をいただいたのでイタリアへの挑戦を決断しました。イタリアへの話が出てから1ヶ月後には契約書にサインしていましたね。
-英語圏であるアメリカなどと比べ、ヨーロッパ圏でのトレーナー活動の前例は少ないと思うのですがなぜヨーロッパでの研修を選んだのでしょうか?
そもそも高校の定期テストで最下位を取るほど英語に対して苦手意識があったこともありますが、大学在学中に参加したスペインのバルセロナへの短期トレーナー研修で得た経験が大きいですね。
研修内容はもちろんのこと語学という面でもかなり自分の中ではポジティブな印象を受けたのでスペインもしくはヨーロッパ圏へ挑戦したいと思いました。
での挑戦
-なるほど。大学在学中にすでに海外研修の経験があったのですね。
はい。あとは大学2年時に参加したアメリカ短期研修で、 実際に言語も含め改めて自分の肌には合わないと感じた事も、ヨーロッパへの興味につながりスペイン研修参加のきっかけになったのかなと。在学中に海外での経験を積めたことやトレーナーとして海外へ挑戦できるチャンスを探し、実際に一歩踏み出せたことも含め、今振り返るとあの時の選択がなければ今の自分はないと言い切れる選択ができたと思っています。
-日本でフィギアスケート選手の陸上トレーニング や近畿大学体育会サッカー部など、トレーナーとして様々な現場での経験を重ねてきた中谷さんですが、実際にイタリアでキャリアを始めて日本との違いなどは感じましたか?
正直、憧れていたヨーロッパ・イタリアでのトレーナー活動はもっとキラキラした物かと思っていたのですが、実際にトレーナーとして現場で活動を続ける中で日本と比べ特別な違いはあまり感じませんでしたね。トレーナーという職業は、世界中どこで活動しようが「 選手をいい状態にすること」だと改めて認識することができたました。
-トレーナという職業は選手とのコミュニケーションを取る機会が多いと思うのですが言語の適応には時間がかかりましたか?
そうですね、とくにイタリアに来て間もない頃の語学レベルは挨拶はできる程度だったので「冒険の初期装備で魔王を討伐しにいく」ようなものでした。特にイタリアの現場では監督やスタッフに トレーナーが面と向かって意見を言える環境という事もあり、イタリア語ができないなりにも選手やチームスタッフと積極的にコミュニケーションを取ることを意識していました。ただ当時のイタリア語は本当に低レベルだったため、後々皆の前で音読されたり、からかわれるような事もありましたが、選手の情報は毎日監督にテキストにして共有したりと自分なりにトレーナーとしての役目を全うすることに全力でしたね。
- なるほど。研修から始まった中谷さんのイタリアでのキャリアですが、 言語の壁がある状況でも全力で向き合うプロフェッショナルな姿勢が、給与も含めた本契約に繋がったのですね。
そうかもしれませんね。 Lazio Calcio A5での契約満了後は、ラグビーチームの Fiamme oro Rugby そして現在のEcocity Futsal Genzanoと計3チームでトレーナーとして契約を結ぶことができ 、母国語が通じない環境の中で私のトレーナーという職業に向き合う姿勢を評価された事はとても自信に繋がりました。
-中谷さんは柔道整復師と鍼灸師の資格の他にOperatore di Shiatsu Namikoshi(浪越流指圧師)の資格もお持ちとのことですが取得の経緯を教えて下さい。
Lazio Calcio A5で活動している時は日本で取得した柔道整復師の資格を英語版に翻訳し所有していたのですが、一度審判に「これはイタリアには存在しない資格だから、ベンチに入ることが出来ない。」と言われてしまった事があったんです。そんな試合に限って筋肉に違和感が残ってる選手を抱えていて、試合中に何かあった時に対応する必要があったのですが最後まで審判団は私のベンチ入りを認めず、最終的にその選手が試合中に肉離れを起こしてしまいました。本当に目の前、わずか5メートル先で起こった出来事にトレーナーとして対応できなかった悔しさは今でも鮮明に覚えています。そんな背景もあって今後自分がトレーナーとしてイタリアで根を張っていくのであれば、この国で通用する資格を取得しなければいけないと思い Operatore di Shiatsu Namikoshi(浪越流指圧師)を学べる学校へ通いイタリア国内で開業権のあるマッサージ師の資格を取得しました。
- イタリア国内で開業権もある資格なんですね。中谷さんの努力と行動力の賜物だと思います。2019年からイタリアでキャリアを重ねる中谷さんですが海外でトレーナーとして挑み続ける意味はなんでしょうか?
ここ数年で、必ずしもイタリアじゃなくてもいいのかもしれないという思いも芽生えてきましたが、なぜまだ海外でトレーナーを継続しているかと聞かれると「今 自分を必要としてくれる人、応援したい選手がいるから」それに尽きると思います。
セリエAというイタリアフットサル界最高峰の舞台でトレーナー活動を続ける中で、6年前イタリアに来た時に感じた、ある種の憧れや羨望はもうありませんが、だからこそ今は自分を必要としてくれている "目の前の選手"を見ていて、これからイタリアでのキャリアを続けようが、他の国に行こうが、自分を必要としてくれる選手と一緒に戦うために日々できること、すべきことに一生懸命に取り組んでいきたいと思っています。
-シーズン後の貴重なお時間をいただき ありがとうございました。NineTimesNineでは これからも続く中谷さんの素晴らしい挑戦を追わせていただきます。最後に今後のビジョンなどがあれば教えてください。
今後はトレーナーとしての活動に加え、海外への挑戦を考えている若手トレーナーの夢を応援していきたいと思っています。私自身 紹介という形でチャンスを掴むことが出来たこともあり、キャリアを築く上で、人の繋がりは非常に重要なポイントだと思っていているので、これからは自分のこれまでの経験を活かし『世界は手が届かないほど遠くはない』ということを実際に体験するきっかけを作り、それぞれのサポートを行う活動をしていきたいですね。
Medical trainer
SHUNSUKE NAKATANI
[2016年] 宝塚医療大学 保健医療学部 柔道整復師学科 卒業
[2018年] 平成医療学園専門学校 鍼灸師科 卒業
[2019-2020年] Lazio Calcio A5メディカルトレーナー(男子セリエA、女子セリエA)
[2021-2022年] A.S.D Genzano C5 メディカルトレーナー
[2022-2025] Ecocity Futsal Genzano メディカルトレーナー